PLANT QUARANTINE 植物検疫とは
農業と緑を守る大切な仕事
「植物検疫」について紹介します。
日本には海外から多くの植物が輸入されています。これらの輸入と一緒に病害虫が侵入してしまうと、日本の農業や緑が深刻なダメージを被るおそれがあります。病害虫の侵入を防ぎ農業と緑を守るために港や空港には農林水産省植物防疫所が置かれ、植物防疫法に基づいて検査官(植物防疫官)により貨物、手荷物及び郵便物で輸入される植物について検査が行われています。検査は輸入が禁止されているものに該当するかどうか、病害虫が付着しているかどうかについて行われます。世界各国でも自国への病害虫の侵入を防ぐために植物検疫が行われています。
ABOUT 植物検疫とは
有名な例では19世紀に欧州でジャガイモ疫病が発生し、特にアイルランドでは多くの餓死者や移民が発生した、世にいわれる「ジャガイモ飢饉」があります。次いで、ブドウフィロキセラという米国ロッキー山脈にいた害虫が、フランスが米国から輸入したブドウ苗により持ち込まれ、1859年から10年足らずで全土にまん延し、フランスワインの生産量が3分の1以下となってしまいました。なお、隣国のドイツはこの害虫の侵入を恐れ、1872年にブドウ苗の輸入を禁止し、これが世界最初の植物検疫制度でした。さらに、フランスはこの害虫を駆除するために、ドイツ、オーストリア、ハンガリー等に呼びかけ、1878年にまん延防止国際条約が締結され、これが植物検疫に関する最初の国際条約でした。このほかに、侵入病害虫が被害をもたらした例として、マメコガネという日本の害虫で、我が国では天敵がいるので大きな被害はありませんが、1916年に米国に侵入し、ダイズ、ジャガイモに被害が急速に広がり、大害虫となりました。侵入の原因は日本からのハナショウブの根回りの土に付着したと考えられ、米国でJapanese beetleと呼ばれています。
植物検疫制度
日本では1914年に輸出入植物取締法により開始され、今日まで100年以上実施され、農作物や森林にとって病害虫からの被害をくい止める役割を担っています。この間、法律は1948年に輸出入植物検疫法、1950年には植物防疫法が制定され、植物検疫を行っています。植物検疫のうちで大きなウェイトを占めているのが、海外から病害虫の侵入を防ぐために行っている輸入植物検疫です。
(写真提供:農林水産省植物防疫所)
検疫の対象について
苗、穂木、球根、種子などの栽培用植物及び野菜、果物、切り花、木材、穀類、豆類等の消費用植物の他、植物に有害な生きた昆虫・微生物など広範囲にわたっています。一方、製材・製茶など高度に加工された植物、植物の病害虫でない昆虫・微生物、死滅した昆虫標本等は輸入植物検疫の対象としていません。そして、植物の種類及び部位ごとに、輸入の禁止、輸出国の栽培地での検査、輸出国での輸出前措置、日本での輸入検査などが実施されています。
植物検疫の対象となるものを輸入した者は、植物防疫所に届け出て、植物防疫官の検査を受けなければなりません。輸入された植物の検査は、輸出国の政府機関による検査証明書(植物検疫証明書又はphytosanitary certificateとも言います。)又はその写しが添付されているかどうか、輸入禁止品であるかどうか、検疫有害動植物があるかどうかについて行います。輸入された植物の検査の流れは、図のとおりです。輸入検査の結果、輸入禁止品に該当せず、植物検疫の対象となる病害虫の付着がなければ合格となり輸入できます。植物検疫の対象となる病害虫が付着していた場合は不合格となり、消毒、廃棄、返送の措置が命じられます。消毒の場合、消毒措置後に輸入することが可能です。なお、苗木、穂木、球根等は海空港での検査のほか、日本国内で隔離栽培を実施して検査が行われます。
【輸入禁止品】
我が国に未発生で世界的に被害の大きい病害虫が発生する地域から、その病害虫の寄主植物や、病害虫そのもの、土は輸入が禁止。
【輸入検査品】
輸入禁止品に該当しない植物であり、苗木・観賞用植物・切り花・球根・種子・果実・野菜・穀類・豆類・木材・香辛料原料・漢方薬原料など
【検査不要品】
植物であっても製材や製茶など高度に加工されたものは、検査品に該当しない。例:塩・砂糖等漬、バナナ・マンゴー等乾果、木・竹工品、家具等加工品、麻袋等繊維製品など
QUARANTINE PESTS 輸入禁止の対象となっている病害虫
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チチュウカイミバエ
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ミカンコミバエ種群
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クインスランドミバエ
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ウリミバエ
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コドリンガ
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アリモドキゾウムシ
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イモゾウムシ
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ジャガイモがんしゅ病菌
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コロラドハムシ
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ジャガイモシロシストセンチュウ
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タバコベと病
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カンキツネモグリセンチュウ
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ヘシアンバエ
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火傷病
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カンキツグリーニング病